「読書の秋」をきっかけに、親子で本を開いてみませんか。
子どもが小学生になると、授業や音読の宿題を通して、自分で文章を読む機会が増えていきます。そんな姿を見ていると、「読み聞かせはそろそろ卒業してもいいかな」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、自分のペースで黙読すること、声に出して読むこと、親の声で物語を聞くことには、それぞれ違った良さがあります。
私は保育士として、さまざまな年齢の子どもたちに読み聞かせをしてきました。現在は、小学1年生と3歳のわが子たちと一緒に、本を楽しんでいます。
今回は、保育士として大切にしてきた読み聞かせの工夫や、わが家での音読の宿題の見守り方を交えながら、小学生になってからでも親子で楽しめる読書の方法を紹介します。
小学生にも読み聞かせを続けたい理由
子どもが自分で本を読めるようになってからも、わが家では読み聞かせを続けています。主に寝る前に本を開き、親子でほっとできる時間を過ごしています。
隣に座ったり体を寄せ合ったりするなかで、子どものぬくもりを感じ、あらためて愛おしく思うこともあります。こうした自然なふれあいは、小学生になった今も読み聞かせを続けている理由の一つです。
同じ物語を親子で楽しむなかでも、子どもならではの感じ方が見えてきます。大人にとっては何気ない場面でも、子どもが驚いたり笑ったりする姿から、「こんなところをおもしろいと感じるんだ」と気づくことがあります。思いがけない一言に一緒に笑えることも、読み聞かせの楽しみです。
さらに、読み聞かせには、物語を通してさまざまな考え方に出会える魅力もあります。
わが子は小学生になり、保育園時代よりも多くのクラスメートと過ごすようになりました。友達との関わりが広がるなかで、「どうしてあの子はあんなことをしたんだろう?」と話すこともあります。読み聞かせを通して、親子で物語に登場する人物の立場や気持ちに触れることが、「あの子はこんな気持ちだったのかもしれない」「こんな見方もあるのかもしれない」と、一緒に考えるきっかけになればと思っています。
こうした学びにつながればうれしいですが、読み聞かせの時間に何かを教えようと構えているわけではありません。親子で寄り添い、同じ物語を楽しむことを何より大切にしています。
自分で読むことの良さと、音読の宿題を見守る工夫

黙読は、自分のペースで物語を読み進められます。気になったところに戻ったり、好きな場面を何度も読み返したりできることも、自分で読むからこその良さです。
一方、音読は、文章を目で追いながら声に出して読みます。自分の声を聞きながら、言葉のまとまりや響きを感じ、文章の意味を理解できているかを確かめられることが、音読の良さです。また、聞き手に伝わるよう、声の大きさや速さを意識することは学びにもなります。わが家の小学1年生には、週に2〜3回ほど音読の宿題が出ています。
読み始める前には、「音読の宿題、面倒くさいな〜」とつぶやく日もあります。それでも、読み終えたあとに「声の大きさがちょうど良かったし、ゆっくり読めていて、聞きやすかったよ」など、良かったところを具体的に伝えると、とてもうれしそうです。
私も教科書を見ながら音読を聞いていると、子どもが気づいていない読み間違いを見つけることがあります。でも、その場で「間違えているよ」と声をかけると、音読の流れが止まり、読む気持ちまで途切れてしまうことも。かといって、間違った読み方のまま覚えてしまうのも心配です。
そんなときは、何も言わずに微笑みながら、読み間違えた箇所をそっと指で示します。すると、子どもはもう一度文章に目を向け、自分で間違いに気づいて読み直します。言葉で注意するよりも気持ちを切らさずに音読を続けられるため、わが子にはこの方法が合っているようです。
もともと音読を「面倒くさい」と感じているからこそ、できたところも具体的に伝えながら、少しでも前向きに取り組める時間にしたいと思っています。
こうした読み間違いやつまずきに気づくためにも、音読中は、親も一緒に文章を目で追いながら聞くことが大切だと感じています。
読み聞かせで大切にしたい三つのこと
保育士として読み聞かせをしていたとき、私は「上手に読めるか」ということよりも、子どもたちの表情や反応を見ることを大切にしていました。
そこで家庭での読み聞かせにも取り入れやすい三つの工夫を紹介します。
①子どもの反応を待つ
子どもが絵をじっと見ているときや、物語の展開に驚いているときは、すぐに続きを読んだり、次のページをめくったりせず、その反応を見ながら少し待ちます。
顔を見合わせて驚きを共有したり、おもしろかった場面をもう一度見たりするのも、読み聞かせの楽しみです。大人のペースでどんどん読み進めず、子どもの反応に合わせて少し間を置くことが、親子で物語を味わうための工夫です。
②好きな話は何度でも読む
私が保育園で働いていた頃は、子どもたちが喜ぶ話を何度も読みました。特に0〜2歳児は、同じ話を繰り返し聞くうちに、その物語をさらに好きになっていく様子がありました。
成長とともに、物語の受け止め方や楽しみ方は変わっていきます。それでも、お気に入りの話を「もう一回」と楽しむ気持ちは、小学生になっても大切にしたいと思っています。
わが家でも一時期は、子どもたちがそろって『じゅげむ』に夢中になっていました。その頃は、最初に『じゅげむ』を読み、そのあとに別の話を二つ読むのがお決まりの流れでした。
親としては、いろいろな話に触れてほしい気持ちもあります。そのため、お気に入りの話を一つ楽しんだあとに、別の話も読むようにしています。好きな話を大切にしながら、ほかの物語にも触れられる方法です。
③感想は子どものペースで
読み終わるたびに「どうだった?」「どう思った?」と尋ねると、子どもは物語を味わうことよりも、「何て答えよう」と考えてしまうかもしれません。そこで私は、感想を聞き出そうとせず、子どもの口から自然にこぼれる言葉を待つようにしています。
わが家では、子どもから「あんなことになるなんて、びっくりしたね」と話し始めることがあります。そのときに「そうだよね、びっくりしたよね」と共感すると、「そうそう。だってね……」とうれしそうに話を続けることもあります。
物語から受け取った気持ちは、いつも言葉にできるとは限りません。感想をうまく説明できなくても、心の中にじんわりと残るものがあります。
無理に感想を聞き出すのではなく、子どもが自分なりに物語を味わう様子を見守ることも、読み聞かせの時間を楽しむための工夫です。
読み聞かせ習慣は短い話から
わが家では、昔話や外国の童話など、短い話が数多く収められた本を読んでいます。
1話は3〜5分ほど。毎晩3話ほど読むのが、寝る前の習慣です。この本には、一つの話に小さな挿絵が1点添えられています。話の内容によっては、3歳の下の子には難しいこともあり、聞いたり聞かなかったりします。
それでも、小学1年生の上の子が集中して聞いている姿を見て、隣に座り、一緒に本をのぞき込むこともあります。下の子が好きな絵本を持ってきたときは、その絵本も読み聞かせをしています。
もし、これまで読み聞かせの習慣がなかった場合は、最初から3話読もうとしなくても大丈夫です。まずは3〜5分ほどの短い話を一つ読むことから始め、慣れてきたら話数を増やしたり、少し長い物語を選んだりすると、無理なく続けられます。
わが家では寝る前が習慣になっていますが、読む時間は家庭によってさまざまかと思います。大切なのは、寝る前に読むことではなく、休日や少し余裕のあるときなど、親子で本を開きやすい時間を見つけることです。
小学生になっても、親子で本を楽しもう
自分のペースで物語を楽しめる黙読、自分の読み方を確かめながら相手に伝える音読、親子で同じ物語を味わう読み聞かせ。それぞれに違った良さがあります。
読み聞かせで大切にしたいのは、たくさん読むことや感想を上手に言うことではありません。子どもの反応を待ったり、好きな話を繰り返し読んだり、自然にこぼれる言葉に耳を傾けたりしながら、親子で物語を楽しむことだと思います。
毎日続けたり、長い時間をつくったりしなくても大丈夫です。「読書の秋」をきっかけに、まずは親子で本を開き、短い話を一つ楽しんでみてはいかがでしょうか。


