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【健康Q&A 小児科】夜尿症(おねしょ)
妊娠、出産、子供の病気…その都度悩みがたくさん出てくると思います。そんな気になる悩みを産婦人科・小児科・小児歯科の各先生方にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「健康相談室」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。
夜尿症(おねしょ)について教えてください。
夜尿症の頻度と自然経過
夜尿症の大半は膀胱と尿量をコントロールする働きが未発達のためです。そのため年齢とともに自然治癒する傾向があり、児童全体として幼稚園児では20~30%、小学入学時では約10%、中学入学時では数%に見られ、ごく一部(<1%)が成人期に移行します。夜尿症のお子さんでは何もしなくても毎年10~15%づつ治ります。一方、7歳時点で月に15日以上夜尿があるケースの自然経過を追うと12歳でも約半数、15歳でも約1割に夜尿が見られ、一部は成人期まで持続していました。
夜尿症についての不安と現状
年齢とともに自然治癒することが多いとはいえ、夜尿症を抱えるお子さんやご家族には“いつ治る・どうすれば早く治る?”、“宿泊行事が心配”、“いじめられるのでは?”といった不安や疑間が少なくありません。最近では睡眠時排尿機構の発達に関する理解が進み、お子さんの状態に応じた治療によって治癒が早まることが明らかになっています。
夜尿症の原因
成長に伴う夜間のホルモン分泌(=尿量をコントロールする抗利尿ホルモン)や自律神経の発達に伴って夜間に作られる尿量は減少し膀胱容量が増大します。結果、睡眠中の排尿間隔は伸びていき9~10時間は排尿しなくて済みます。夜尿症の大半は夜間の抗利尿ホルモン分泌不足か膀胱容量の不足が主たる原因です。これに食事習慣や生活環境・心理的要因が付加的に作用します。
夜尿症診断の流れ
❶重症度判定(図1)
一般に夜尿が一晩2回以上の場合,あるいは就眠後間もなく(午前1時頃まで)にみられる場合は重症と判定されます。
❷病型診断(図2)
・夜間尿量:夜尿量(オムツ計測した夜間尿量)+起床時尿量
・最大膀胱容量:昼間の時間帯で(最大に)我慢した排尿量
・起床時尿浸透圧(もしくは尿比重)
等に基づいて病型分類します。
❸基礎疾患・併存疾患の診断・除外
間診にて発達や昼間遺尿・極端な多飲/多尿の有無を確認し、検尿・尿路超音波検査・脊推X線などの検査所見も参考にします。
夜尿症の治療
❶治療開始にあたって
夜尿症の治療は体質を変える側面があるため時間がかかります。軽症でも数カ月、中等症・重症例では年単位を要する場合があります。食事指導や夜尿の記録などご家族の協力に加えて、何よりも本人の治療意欲が大切で根気が必要です。通常は注意事項の守れる7~8歳以降が適応と言えます。また、寒さは夜尿症を増悪させるため治療開始にあたって季節性も者慮します。
❷生活指導
保護者には、1)夜間に起こさない、2)失敗を責めない、3)夕食は早め(就眠3時間前まで)、4)夕食は薄昧で汁物・塩分は控え目、5)夜間排尿の記録(お子さんと協力して)を、一方 お子さんへは、1)夕食後水分摂取・夜食の制限、2)就寝前の排尿 を指導します。
❸薬物治療(詳細はご相談下さい)
生活指導が守られても十分な効果のない場合に対象となります。
・抗利尿ホルモン内服(ミニリンメルトR):夜間尿の濃縮
・その他 抗コリン剤(膀胱容量の増加)・漢方薬など
❹アラーム法(ピスコールR、図3)
ご家族と本人の動機づけが十分にある場合に適応となります。送信機を付けた専用のトレーニングパッドの上からパンツを履き、おねしょを感知するとアラームが鳴ります。本人(もしくは保護者)がアラームを切り、起きて(あるいは起こして)トイレに行き、おしっこをしてからパンツを履き替えて朝までやすみます。併せて所定の観察項目を記録します。多くの場合、睡眠中の尿保持力が増大することで朝まで持つようになります。夜尿症全般を含めて詳細は以下のHPを参照ください。(アワジテック社 https://www.pisscall.jp/)
生活指導を含めいずれも約1カ月の観察期間で効果判定します。失敗した日数のみならず夜間尿量が減ったか、夜尿の時間帯が朝方にずれたか、夜尿時に覚醒したか なども効果判定の参考になります。夜尿記録をしっかりつけていただくことが大切です。
(2012年夏vol.41号掲載。2020年web掲載にあたり一部加筆修正)
富山県立中央病院小児科部長 五十嵐 登先生
昭和58年、金沢大学医学部卒業。平成9年より現職。
日本小児科学会専門医、日本マススクリーニング学会評議員。