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編集部のライターたちが
富山での子育てに役立つ
【Baby Q&A】言葉の発達の遅れ
発達、しつけ、睡眠…子育てをしていると悩みがつきませんよね。
乳幼児の子育ての悩みを専門家にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「ようこそ! こどものせかいへ」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。
言葉の遅れが気になるのですが、「男の子だから」と周囲の人に言われます。本当に大丈夫でしょうか?
言葉の発達と男女差
「女の子は言葉の発達が早く、男の子は遅い」と経験的に語られることが多いようですが、科学的に証明されてはいません。最近は脳科学が発達し、男性と女性の脳の働きには、異なる特徴がある(例えば空間認知能力や言語表現など)ことがよく伝えられます。しかしこれを否定する研究もあるのです。幼い子どもの脳機能については、まだまだ未知の部分が多く、感覚や運動面にわずかな差異があったとしても、「言葉の発達における男女差」を言い切るものではないようです。むしろこの頃は、発達の個人差が大きい時期です。男女差よりは個人差に目を向けたほうがよいでしょう。
言葉の発達をさぐる
(大人である)私たちが聞き取れる“ことば”の数を、単純に発達の目安とするのではなく、他の面にも目をむけてみましょう。
まず、言葉の「音」という面に目を向けると、音の違いを“聞き分ける”ことと“声として使い分ける”ことが必要です。たとえ言葉になっていなくても、イントネーションや音の高低で表現できているようならば、使い分けているといえます。
次に、言葉の「意味」という面に目を向けると、“理解する”ことが必要です。例えば“リンゴ”と聞いて、実際のリンゴをイメージし、言葉と結びつけて覚えることが前提となります。最初は、“リンゴ”の範囲が広く、“なし”や“ミカン”も含んでしまうことがありますが、このような誤りは、発達のプロセスでみられる姿です。言葉が意味するモノや場所・事柄などを具体的にイメージし、大まかに結びつけることができているかがポイントです。大人からの指示や言葉がけに対する行動を見ながら確かめてみましょう。
最後に、言葉の「役割」という面に目を向けると、“コミュニケーションの欲求”が重要になります。「自分の思いを伝えたい・相手とやりとりしたい」という欲求があってこそ、言葉が必要となるのです。たとえ大人が聞き取れる“ことば”がなくても、声や泣き、身振りを使って思いを伝えようとしていたり、大人の表情や行動、声に注目して、その意味を理解しようとしたりする姿があれば、コミュニケーション欲求があるということです。言葉を発する手前に見られる「指さし」が重要な目安となるのも、相手に伝えたい欲求、相手が指さしの先を見て自分の思いを理解してくれるという信頼感にもとづく行動だからです。
言葉の発達をうながす
3つの視点でお子さんの様子を見つめ、気になるようであれば保健センター等の身近な機関に相談してみるのもよいでしょう。
子どもの言葉は、身近な大人とのやりとりが基盤となります。食事などの生活場面や遊びの中で、子どもの行動にそって言葉を添えること、子どもからの発信を受けとめ、応答のタイミングをはずさないことを心がけましょう。豊かな子どもの生活体験とそこに添えられる言葉は、子どもの理解を広げます。受容される安心感と応答される喜びは、コミュニケーション欲求を高めてくれます。だからこそ、かかわる側の大人にも、周囲の人に支えられる安心感が必要なのだと思います。
(2016夏vol.57号掲載)
石動 瑞代先生
富山短期大学 幼児教育学科教授
富山短期大学付属みどり野幼稚園園長
お茶の水女子大学家政学部児童学科卒業。県立保育専門学院等の勤務を経て平成17年4月より富山短期大学幼児教育学科勤務。 平成21年、日本大学大学院人間科学修士取得。
●専門分野 保育学
●担当授業 保育原理・乳児保育・家庭支援論