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編集部のライターたちが
富山での子育てに役立つ
【Baby Q&A】しつけを始める時期
発達、しつけ、睡眠…子育てをしていると悩みがつきませんよね。
乳幼児の子育ての悩みを専門家にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「ようこそ! こどものせかいへ」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。
1歳を過ぎたので、そろそろしつけが必要だと思うのですが、早いでしょうか?
「しつけ」とは?
いくつかの意味がありますが、子育てとの関連では、「礼儀作法を身につけさせること(広辞苑)」として多く使用されています。「躾」という漢字のとおり、「身を美しく」ということなのでしょう。しかし、「美しい=社会的に望ましい」と考える行動内容やしつけの方法は、人によって異なり、「しつけ」という言葉のニュアンスも違ってきます。
虐待にあたるような行為は論外ですが、「子どもに正しい行動を身につけさせるには、ある程度厳しいしつけが必要」とする意見は、案外聞かれます。これは「しつけ」が、子どもに言い聞かせたり行動を矯正したりという「大人からの一方的な指導」だと考えるからでしょう。残念ながらそう考えると、大人の指示や期待に沿わない子どもの姿には、より強力で厳しい大人側の働きかけが必要だと思ってしまうのです。
一方で、しつけを裁縫の「仕付け糸」になぞらえて説明することがあります。本縫いできれいに形づくられるように、適度なゆるみをもってかける糸。子育てにおけるしつけも、子ども自身が美しく自分を作りあげることができるように、ゆったりとガイドするというものです。
親は、子どもに対する期待や社会に対する責任を感じ、つい「しつけ」に力が入ってしまうもの。でも、仕付け糸が強すぎては、きれいな形に仕上げることは難しい。適度な塩梅で、子ども自身が失敗しながら育つゆとりを準備することが大切なのだと思います。
しつけのスタート
乳幼児期のしつけは、主に「危険回避」「生活習慣の自立」「社会的行動(挨拶や場面に応じた行動)の獲得」が対象です。多くの家庭では、親子間で育んできた“響きあう関係”を土台に、1歳前後からしつけを意識するようです。1歳近くになれば、様々な生活場面で身振りなどを使ったコミュニケーションがとれるようになります。1歳代後半には、恥ずかしさや罪悪感といった感情が望ましい行動の理解を助けます。また、歩けることで行動範囲が広がり、好奇心旺盛に動くため、安全面の配慮が重要となる時期でもあります。
一方子どもは、まだまだ言葉や状況の理解が不十分。気持ちの調整はもちろん手指やからだも思いどおりには動かせません。この時期には「行動できること」を期待するのではなく、親が「見せる・伝える」ことで、「行動に関心を向けること」や「真似ること」を育てます。危険回避は大人側の配慮を重視しましょう。
2、3歳とできることが増えていきますが、親が先を急いだり、完全な行動を求めたりしないよう注意が必要です。実際、自分を少し客観的に見つめることができるようになり、出来事の因果関係をふまえた理解が可能となる4歳頃が、本格的なしつけのスタートと言えるかもしれません。
成長とともに
乳幼児期が終われば、児童期、思春期と自立への道を歩む子どもたち。次第に親のしつけが難しくなっていきます。だからといって、早くから大人びた行動を求めるのではありません。年齢発達にふさわしい(少し背伸びした)姿を親が仕付け、その糸を外して子どもが成長する喜びを感じながら、また背伸びした姿を仕付けていく。その繰り返しが、社会と適切に関わり、自らの個性を発揮しながら活躍する人を育てていくのです。
(2016秋vol.58号掲載)
石動 瑞代先生
富山短期大学 幼児教育学科教授
富山短期大学付属みどり野幼稚園園長
お茶の水女子大学家政学部児童学科卒業。県立保育専門学院等の勤務を経て平成17年4月より富山短期大学幼児教育学科勤務。 平成21年、日本大学大学院人間科学修士取得。
●専門分野 保育学
●担当授業 保育原理・乳児保育・家庭支援論