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編集部のライターたちが
富山での子育てに役立つ
【Baby Q&A】「抱っこで登園」をやめたい
発達、しつけ、睡眠…子育てをしていると悩みがつきませんよね。
乳幼児の子育ての悩みを専門家にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「ようこそ! こどものせかいへ」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。
車から抱っこをしていかないと登園できません。どうしたら抱っこなしで登園できますか。
ルーティンの効果?
お母さんと離れるのがいやで激しく泣く子と、時間が気になってやきもきする親。そんな情景が目に浮かびます。何とか抱っこをして保育室へ。ホッとすると同時に、「このままでは甘やかし?」と不安にもなるのでしょう。よくわかります。
2歳前後の子どもと付き合うとき、このような戸惑いがよくおこります。このケースも、抱っこは、困ったときのお助けワザとしてはありがたいのですが、あたり前の行動として固定化してしまうと困ってしまうというもの。そのうち“抱っこ”なしでも登園できるようになるだろうという親の期待とは別に、子どもは「抱っこなしでも登園できるけど、抱っこの心地よさは捨てきれない!」と固執する場合があります。
生活習慣の自立には、いくつかの行動が結び付いてルーティン化(習慣化)することが大切です。しかし、結び付いてしまうと困るルーティンもあるのです。
受容か甘やかしか?
この時期の子育てで悩むのは、「甘え」のとらえ方です。このケースでも、抱っこを求める子どもの気持ちを「甘え」ととらえるのか「不安の表現」ととらえるのか、悩むところでしょう。
「不安の表現」だとすれば、安全基地としての親の関わりを必要としているのですから、受容して安心できるようにと考えます。しかし「甘え」だとすれば、全面的に受け入れるかどうかの迷いが生じます。甘えたい気持ちは受容したいが、甘やかしすぎてはいけないという葛藤がおこるからです。
甘やかしかどうかの判断には、子どもの要求が成長に必要なものかを見極めなければなりません。しかしそれは難しいこと。結局、子どもの様子や親子間のやりとりから、親自身が判断するしかないのです。自分の判断に自信がもてず、対応が揺らぐのもやむを得ません。恐らくこの場合も、すんなり応じてみたり、歩かせようと働きかけたりの綱引き状態なのでしょう。
行動に目を向けてみる
子どもの気持ちを理解することはとても大切ですが、目に見えないものをとらえることは難しいもの。時には行動だけに目を向けてみることも対応のひとつです。
例えば今回の場合は、ルーティン化している行動(泣く→母の抱っこ→登園)を少し崩すことを考えます。
例1)手を怪我したという演技をして、抱っこ以外の方法を提案(手をつなぐ、保育者が迎えに来る、ベビーカーを使う等)する
例2)抱っこはするが、お友達と一緒に入る、保育室に入る経路や抱っこから降ろす場所を変える
例3)父や祖父母と登園する日をつくる
など、いろいろ考えられます。内容よりも、いつもとは違う行動(説得ではない、新しい)が有効です。そして、いつもと違う行動で登園できたら、それを十分にほめましょう。また、変化が見られなくても、抱っこを必要とする子どもの本当の気持ちが見えやすくなるはずです。
登園場面では、親の出勤時間という時間的制約があり、親子双方の折り合いが必要です。あまり思い悩まず、気分を変えて行動することで、双方が折り合えるチャンスを見つけることができるのではないでしょうか。
(2017夏vol.61号掲載)
石動 瑞代先生
富山短期大学 幼児教育学科教授
富山短期大学付属みどり野幼稚園園長
お茶の水女子大学家政学部児童学科卒業。県立保育専門学院等の勤務を経て2005年4月より富山短期大学幼児教育学科勤務。 2009年、日本大学大学院人間科学修士取得。
●専門分野 保育学
●担当授業 保育原理・乳児保育・家庭支援論