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富山での子育てに役立つ
【健康Q&A 産婦人科】不妊症
妊娠、出産、子供の病気…その都度悩みがたくさん出てくると思います。そんな気になる悩みを産婦人科・小児科・小児歯科の各先生方にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「健康相談室」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。
不妊症について教えてください。2人目不妊になる可能性は高いのでしょうか。
不妊症とは?
生殖年齢の男女が妊娠を希望し、一定期間性生活を行っているにも関わらず、妊娠しない場合を不妊症といいます。一定期間とは、1~2年と考えるのが一般的です。性交が多いほうが妊娠する可能性が高いのですが、週に2回性交を持っても妊娠するまでに約半年かかるという報告もあります。
年齢と妊娠
卵巣にある赤ちゃんのもとになる細胞、卵子の数は、実は胎児(お母さんのおなかにいるとき)がピークで約700万個、その後は減る一方で、生まれたときにはすでに約200万個まで減少しています。思春期には約20~30万個になり、その後は緩やかに減少していきますが、30歳を過ぎると減少のスピードが徐々に加速し、37歳を境に急激に減少します。
数だけでなく、一つひとつ年齢を重ねるにつれ、卵子も一つひとつ年齢を重ねていきます。卵子の老化現象として、妊娠する力が下がることが挙げられます。また、子宮筋腫や子宮内膜症といった不妊症の原因となる可能性がある病気は年齢とともに罹患率が上昇します。
ホルモンバランスがよく、子宮や卵巣の問題が少なく、心身、卵巣機能、卵細胞が元気な期間、それが妊娠に適した時期です。その時期は女性にとっては25~35歳前後です。35歳前後から、だんだんと妊娠する力が下がり始め、40歳を過ぎると妊娠はかなり難しくなります。そして、妊娠したとしても、流産する確率が高くなります。40歳では20~30%、45歳では30~50%の女性で流産が起こります。
最近では男性も女性ほど急激ではありませんが、35歳を過ぎると徐々に妊孕性<にんようせい>(妊娠をさせる能力)が低下してくるといわれています。
月経があるのに妊娠できないことも
1人目を自然に妊娠し、産後順調に月経が再開しても、なかなか1人目のときのようには妊娠しないということもあります。最近では女性の初婚の平均年齢が30歳を超えていますので、1人目は30代前半ですぐに妊娠できたとしても、2人目のときは35歳を過ぎているということも多いと思います。
一生で排卵される卵子は、初経から閉経まで毎月排卵があったとしても、せいぜい480個程度です。これは初経の頃の卵子の数の1%以下です。残りの99%は卵巣の中で変性し、消滅してしまうのです。そして、排卵された卵子が必ずしもみんな、赤ちゃんになれる素質を持っているわけではありません。そして、卵子の数や質はとても個人差が激しいのです。
なかなか妊娠しない場合、何か病的な異常があって、それを治すためにお薬を飲んだり、体外受精などの高度な生殖医療を受ければ何とかなると思われる方も多いのですが、検査では特に異常のない方も多いですし、卵子の数を増やしたり、質を良くするお薬はありません。高度生殖医療を受けても40歳以上の方だと妊娠率は10%以下なのです。
男女共に考えることが大切
女性の社会進出が進み、出産後も社会復帰し、仕事と子育ての両立を目指す女性が増えてきました。これはとても喜ばしいことです。しかし、まだまだ子育てや家事は女性の仕事と思っている人が多く、男性が家事、育児に費やす時間は女性の6分の1です。
1人目出産後に夫の家事や育児への参加が無いと、急速に夫婦仲が冷め、セックスレスに陥っているご夫婦も見受けられます。そこまでではなくても、仕事や育児で疲れ切ってセックスどころではないが、年齢も年齢だしそろそろ2人目を考えなくてはと相談にいらっしゃる方も多いです。最初に書いたように、性交が多いほど妊娠する可能性は高いです。男女が一緒になって、「いつまでに子どもを産むのか、何人の子どもが欲しいのか」といったことを話し合い、しっかりコミュニケーションをとっていただきたいと思います。そうすることで、「もっと子どもが欲しかったのにできなかった…」ということも起きにくくなると思います。
(2015年夏vol.53号掲載)
女性クリニックWe! TOYAMA院長 若杉 聡美先生
1996年富山医科薬科大学(現・富山大学)医学部卒業後、産科婦人科学教室に入局。
2003年自治医科大学生殖医学センターにて研修。
富山大学産科婦人科助教を経て、2008年より女性クリニックWe! TOYAMA。2019年より現職。
医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会会員。