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富山での子育てに役立つ
【健康Q&A 小児科】赤ちゃんとはちみつ
妊娠、出産、子供の病気…その都度悩みがたくさん出てくると思います。そんな気になる悩みを各科の先生方にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「健康相談室」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。
はちみつが赤ちゃんに危険なのはなぜですか。何歳から与えてもよいでしょうか。
何でも口にする赤ちゃん
好奇心旺盛な赤ちゃんは、何でも口にしてしまうことがよくあります。これは、口の中の刺激が感覚の発達につながっていく、赤ちゃんが育っていく上でごく自然なしぐさです。むりやりやめさせることは必要ありません。
しかし赤ちゃんの周囲には、タバコや電池、大人の薬、クリップ、洗剤等、口の中に入れたときにすぐに対応が必要な危険なものがあります。まずは、危険なものを赤ちゃんの手の届かないところで保管することが大事です。赤ちゃんの周囲の環境が安全か、常に気を配りましょう。
ただ、食品の中にも赤ちゃんにとって危険なものもあります。早期から食べさせてよいものと一定の時期までは食べてはいけないものがあります。そのひとつとして“はちみつ”が有名ですが、意外と「なぜ危険なのか」ということは知られていません。
赤ちゃんは免疫力が弱く消化器官が未熟
はちみつにはボツリヌス菌という毒素の強い菌が含まれていることがあります。ボツリヌス菌は自然界に広く存在している菌で、酸素を嫌う特徴があり、普段は「芽胞」と呼ばれる状態で存在しています。大人が食べても食中毒を引き起こすことはありませんが、免疫力が弱く消化器官が未熟で短い赤ちゃんが食べると、すぐに腸まで芽胞が到達し増殖し毒素を作り出してしまい、乳児ボツリヌス症を発症することがあります。1歳を過ぎれば、消化器官がよく働くようになり、はちみつを食べても健康に影響が出る心配は少なくなります。
神経麻痺を引き起こすボツリヌス菌
ボツリヌス菌は、感染してから発症するまで潜伏期間があります。短くて3日、長くて30日潜伏することもあります。ボツリヌス菌は筋肉に作用して神経麻痺を引き起こすため、呼吸や心臓に影響を及ぼし、不幸にも命を落とすことがあります。今年日本国内初の死亡例がありました。症状としてはまず便秘が続くようになります。これは、腸内でボツリヌス菌が繁殖して毒素を出し、腸の働きを弱めてしまうからです。それまでウンチに何の問題も無かったのに、突然便秘が続くようになった場合は、食べたものにはちみつが混ざっていなかったか見直すようにしましょう。元気がなく授乳量が減るようならば必ず医師に相談しましょう。
加熱殺菌をしても危険なボツリヌス菌
赤ちゃんが誤ってはちみつを口に入れてしまったら、まず口の中のはちみつを拭い、ミルクや母乳をしっかり飲ませるようにしましょう。
もちろん、すべてのはちみつにボツリヌス菌が含まれているわけではないので、誤って食べてしまっても乳児ボツリヌス症を発症しないことも多くあります。
菌なら加熱殺菌すれば大丈夫と思いがちですが、ボツリヌス菌の耐性は非常に強く、簡単な調理の加熱では死滅しない耐久性があります。100℃の温度で数分以上加熱させると、毒素自体は死滅させることができますが、芽胞は死滅せずに生き延びるため、赤ちゃんの体内に入れば増殖していく可能性があります。そのため、加熱調理されていたとしても感染する可能性がありますので、早い月齢ではちみつを食べさせることはおすすめしません。赤ちゃんのために十分に注意しましょう。
(2017年秋vol.62号掲載)
若葉会髙重記念クリニック副院長 高尾 幹先生
平成2年富山医科薬科大学医学部を卒業後、新潟、群馬の病院勤務を経て、平成15年より現在の役職。院内に病児保育室ラグーンを運営するなど、地域の子育て支援をモットーとする。
日本小児科学会専門医。日本アレルギー学会専門医。