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富山での子育てに役立つ
【健康Q&A 小児科】子どもの便秘
妊娠、出産、子供の病気…その都度悩みがたくさん出てくると思います。そんな気になる悩みを産婦人科・小児科・小児歯科の各先生方にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「健康相談室」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。
私に似たのか便秘気味のわが娘…。見ていてかわいそうになります。子どもの便秘の原因と治療法を教えてください。
便秘とは
便秘の明らかな定義はありません。3日以上排便がないことをあげている基準もありますが、毎日便がみられていても排便時に大変な困難を伴う場合や少量の便のみでその後も排便しようといきんでいる場合も便秘にあたると思います。便秘という言葉にお子さんを当てはめるのではなく、お子さんの排便が常に困難を伴う場合は、「便秘として治療介入」が必要と考えます。つまり、便秘とはウンチが出しにくいことです。
出しにくいのはなぜ?
あなたはどのように便をしているでしょうか。「ウンチがしたく」なってトイレで便をしますよね。この「ウンチがしたくなる」ことがとても大切な点だと思いませんか?
「ウンチがしたくなる」ことを便意といいます。便秘のお子さんは便意がないのでしょうか? 決してそうではありませんよね。むしろウンチを出そうと必死ですよね。ではなぜ出せないのでしょうか?
それは、出口(肛門)の周辺に障害物があるからです。便秘で受診されるお子さんの多くは本来おなかの中を卒業していなければならない先輩達が校門、いえ肛門を通過してくれないからです。便は長く大腸にとどまると大腸で水分をとられて固くなります。固い便が大きくなってたまると、排便しにくくなります。固くて大きい便となると排便時に腹痛と肛門部痛を感じるために排便をさけようとします。そうすると先輩はさらに大きな集団となり、もっと排便が難しくなります。便秘の正体は、「ウンチがしたい」ときに排便できないことにあります。
便秘の治療
生活習慣の改善(水分、食物繊維を多くとる)でよくならない便秘は治療の対象になります。便秘の治療は3段階に分けられます。
第1段階 まず固い先輩達を追い出すこと。障害物(交通渋滞)を取り除かない限り、便はスムースに流れません。卒業していなければならない先輩を肛門から追い出す必要があります。そのときには乱暴かもしれませんが、浣腸で出させたり、指でほじくり出したりする必要もあります。
第2段階 薬(緩下薬)の使用です。緩下薬の誤った使い方は、「便秘のときだけ飲ませる」やりかたです。緩下薬は毎日使用して便意があらわれたときにスムースに便が出せるようにすることが大原則です。毎日ご飯を食べるので、本当は毎日ウンチをしたいところ(いわゆる質量保存の法則)ですが、2、3日に一度でもよいのでなるべく困難を伴わないでウンチができることが第2段階の目標です。
第3段階 緩下薬を使用しながらウンチができるようになってきたら、緩下薬を少しずつ減らします。いきなりお薬をやめて上手に便ができるようになるお子さんもおられますが、多くは便秘を再発させます。少しずつ薬を減らして最後は自力で排便できるように誘導していきます。
以上のように書きましたが、便秘の治療とは、「いかに上手にウンチを出す感覚をとりもどすか」にあります。だって赤ちゃんの頃は教えなくてもウンチしていたんだもの。
便秘の治療は必要?
便秘は便が大腸でたまりこむことが問題です。大腸には便意のスイッチがありますが、それは大腸内のどこかが広がったり、圧力が加わったりしたときにスイッチが入るため、普段から腸がひきのばされたままでは「ウンチがしたくなる」感覚がにぶくなる可能性があります。その理由から便秘の治療はとても大切です。
(2016年8月25日秋vol.58号掲載)
しむら小児科クリニック院長 市村 昇悦先生
平成7年金沢大学医学部を卒業し、同大学小児科学教室へ入局。
金沢医療センター、富山県立中央病院の勤務を経て平成23年10月より高岡市にてしむら小児科クリニックを開院。