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編集部のライターたちが書き下ろした
富山での子育てに役立つ情報をまとめています

ヘルスケア
2021.06.21

【健康Q&A 小児歯科】子どもの歯の変色

妊娠、出産、子供の病気…その都度悩みがたくさん出てくると思います。そんな気になる悩みを産婦人科・小児科・小児歯科の各先生方にお聞きしました。
このページは、はっぴーママ富山版に掲載している「健康相談室」の過去に掲載した記事の中から抜粋してお届けします。

 

ご相談内容
6歳の子どもの奥歯の色が変です。放っておいてもよいものでしょうか。

 

エナメル質形成不全による変色
一般的に永久歯は、5歳ぐらいで下あごの真ん中の歯が生え、6歳ぐらいに奥歯の第一大臼歯が生え始めます。乳歯列の後方に生え変わるのではなく、直接生えてきますので、乳歯と勘違いされる方もおられます。次いで、上あごの真ん中の歯が出て、順次生え変わっていきます。生え変わりの時期が違うように永久歯は作り始める時期に違いがあります。
乳歯は胎内にいる時に作られるので、つわりなどお母さんの体調が余程悪くない限りは変色は見られません。永久歯は、お子さんが生まれた後に作り始めるのですが、第一大臼歯は、胎生10カ月、出産前後に作り始めます。そのため、分娩の異常等が、エナメル質の形成に大きく関係します。逆子、吸引分娩、帝王切開など赤ちゃんに大きなストレスがかかると、その時に形成中だった第一大臼歯のエナメル質に形成不全という異常が現れます。表面に白濁ができたり、クリーム色、茶色い部分、ひどい場合は表面に欠損が現れたりします。
これらの形成不全部分は、修復されることなく生えてきますので、非常にもろい状態になります。現在のところ、エナメル質形成不全歯は幼稚園、保育所、小学校等の検診時に記載対象になっていないので、知らないうちに重症ムシバになっているお子さんも見受けられます。
ご質問の永久歯の色はこのエナメル質形成不全によるものと思われます。

 

色の異常を見つけたら早めの受診を
形成不全が発症する要因についてはまだ特定されていませんが、私の長年の臨床経験から、近年形成不全歯が増加しているように思われますし、そういう報告も見られます。
第一大臼歯は「かみ合わせのカナメ」と言われ、永久歯列を形作る非常に大事な歯です。歯が生え始めた時に色の異常を見つけたら、完全に生え終わっていなくても早めに歯科医院で見てもらいましょう。形成不全歯は、変色した部分は治りませんが、時間をかけてだんだんと硬さが増していきますので、大切にすれば十分に機能を果たすことができます。
次に、生えたばかりの上あごの前歯に白濁が見られることがよくありますが、転んで乳歯の前歯をひどくぶつけたりした場合に、後遺症として白濁や圧痕として現れます。これも治ることはなく、ムシバになりやすいので丁寧なブラッシングを心がけましょう。永久歯の変色の原因がムシバによるものか、形成不全かは、受診してよく調べてもらってください。
診療に当たっていて数年来、形成不全歯のあるお子さんについて調べたところ、分娩時の異常がなかったと言われるお母さんの割合が以前と比べて多くなっているのが気がかりでした。
昨年、日本小児歯科学会では、全国的に医院を受診したお子さんの中から無作為に五千名余りを対象に形成不全歯の調査をしました。原因が究明され、幼弱永久歯を守る手段が見つかればと当院でもお母さんとお子さんに協力をいただき、調査に参加いたしました。まだ、調査結果は出ていませんが、ご家庭でも部分的な歯の色の変色に関心を持っていただき、ムシバ予防につなげていけたらと思っています。

(2016夏vol.57号掲載)

あるぷす小児歯科医院院長 和記 暢子先生

愛知学院大学歯学部卒業。
同病院小児歯科勤務後、あるぷす小児歯科医院開業。
日本小児歯科学会会員。