この連載では、眠りの専門家が睡眠について、毎日の子育てや妊娠生活の中で、「知っておくと安心できること」「今だからこそ大切にしてほしいこと」などを分かりやすくお届けします。
生まれてくる赤ちゃんのため、そしてママ自身の健康のために、今回は妊娠期からはじまる「眠育」について学びましょう。
妊娠中の生活や眠り方が、これから生まれてくる赤ちゃんの脳の発達にも関わっていることが、少しずつわかっているようです。

監修:株式会社エムール睡眠・生活研究所
所長 神川康子
国立大学法人富山大学名誉教授、博士(学術)、一般社団法人日本睡眠改善協講会理事、日本眠育協議会理事、株式会社エムール睡眠・生活研究所所長。
妊娠期からはじまる「眠育」入門

「子どもには、しっかり眠ってほしい」。そう思う親は多いと思いますが、「じゃあ、具体的に何をしたらいいんだろう?」ということは、意外と知られていません。
まず、「眠育」についてご存知でしょうか?
眠育は、その名の通り睡眠で健やかな育ちを応援することです。
「早く寝ようね」という声かけだけではなく、体内時計のリズムを整える・日中の過ごし方を工夫する・家族全体の生活リズムを見直すというようなもう一歩踏み込んだアプローチを含めて考えるのが、眠育のポイントです。
眠育は実は、妊娠中から始まっています。「赤ちゃんが生まれてからが本番」と考えがちですが、脳や体内時計の土台づくりは、お腹の中にいる時期から少しずつ始まっていると言われています。
妊娠中の生活で、たとえば以下のような状態が長く続くと、胎児の脳への影響が心配されることがあります。
・夜更かしが当たり前で、睡眠不足が続いている
・昼夜逆転のような生活リズムが続いている
・強いストレスを抱えたまま、休む時間がほとんどない
・太陽光をほとんど浴びず、室内だけで過ごす日が多い
もちろん、「少し夜更かしした」「忙しい日が続いた」というだけで、すべてが決まってしまうわけではありません。
大切なのは、少し意識を向けて、できる範囲で過ごし方を整えていくことです。
妊娠期の眠育:がんばりすぎない3つの習慣
完ぺきを目指す必要はありません。 暮らしの中で、今日から取り入れやすい「3つのシンプル習慣」から始めてみましょう。
【1】朝一番で光を浴びる
・起きたらカーテンを開けて、10〜15分ほど朝の光を浴びる
・天気が良ければ、ベランダや玄関先で深呼吸する
朝の太陽光は、体内時計に「一日のスタートだよ」と教えてくれます。これは、お腹の中の赤ちゃんのリズムづくりにも関係していると考えられています。
【2】「寝る前2時間」をゆっくりタイムに
・寝る直前までスマホやパソコン作業をしない
・明るすぎる照明を少し落として、間接照明にする
・温かい飲み物をゆっくり飲みながら、リラックスする
夜のリラックスタイムを意識的につくることで、眠りにも入りやすくなります。
【3】ストレスをひとりで抱え込まない
・パートナーや家族に「今ちょっとしんどい」と素直に伝える
・産婦人科や助産師、市町村の相談窓口に話を聞いてもらう
ストレスをゼロにすることはできませんが、「誰かに話す」だけでも、心と体は少し軽くなります。これも立派な眠育です。
生まれてからも続いていく「脳の守り方」

赤ちゃんが生まれると、今度は授乳やおむつ替えで、どうしても睡眠は細切れになります。 「ちゃんと眠らせなきゃ」と肩に力が入るお母さん・お父さんも多いのですが、ここでもがんばりすぎないことがとても大事です。
乳幼児期には、こんなイメージで眠育を取り入れていくことから始めましょう。
・朝は、できるだけ同じ時間にカーテンを開けて光を入れる
・お昼の間に、ベビーカーや抱っこで少し外気浴をする
・夜は、部屋の明かりと音を少し落として「夜モード」に切り替える
大人のリズムが整うと、赤ちゃんも自然とそれに引き寄せられていきます。
「完ペキにスケジュール管理をする」より、大人がほどよく休みながら、ゆるやかなリズムをつくることが、いちばんの眠育かもしれません。
「ちゃんとできていないかも」と感じている人へ

SNSや育児本には、整然としたタイムスケジュールや、よく眠る赤ちゃんの姿がたくさん並んでいます。 それを見て、「うちの子は全然できていない」「私がダメなんだ」と感じている方もいるかもしれません。でも、本当に必要なのは「100点の正解」ではなく、「ちょっとラクになれる工夫」です。
そうした小さな一歩の積み重ねが、赤ちゃんの脳と、親の心を守ってくれます。
できることをできる時にする。そして、子どもと親のストレスを少なく過ごすことから眠育は始まります。
神川先生が執筆された書籍


